企業兼大株主エア・ウォーター東証プライム:4088】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループの経営理念は、次のとおりであります。

「創業者精神を持って、空気、水、そして地球にかかわる事業の創造と発展に、英知を結集する」

 当社グループの事業の原点は、社名に冠した「空気」と「水」であり、このかけがえのない地球の資源を活かして事業を創出し、社会や人々の暮らしに貢献していくことが当社グループの使命であります。当社グループは、この経営理念の下、目まぐるしく変化を続ける経営環境の中でグループの総合力を発揮し、社会の発展に役立つ多種多様な製品・サービスを提供する企業であり続けることを目指しております。

(2) 中長期的な経営戦略

2030年に向けた目指すべき経営の方向性として、「地球の恵みを、社会の望みに。」をパーパスと定義した上で、「地球環境」と「ウェルネス」の2軸を設定し、2022年7月に2022年度から2024年度の3ヵ年を対象とした中期経営計画「terrAWell 30 1st stage」を公表しました。将来の成長に向けて、新規事業や海外展開を進めるための投資を積極的に行いながら、国内の既存事業を中心とした収益構造の強化を図ることで、成長と投資の好循環を生み出していきます。また、多様な事業、人材、技術と地域密着の事業基盤を活かした掛け算のシナジーを創出し、部分最適から全体最適によるグループ経営資源の最適化を進めることで、経済価値と社会価値の両面から企業価値を高め、持続可能な成長を目指していきます。


(3) 経営環境、目標とする経営指標及び対処すべき課題

 当社グループを取り巻く事業環境は、インフレ抑制を目的とした諸外国の利上げに伴い、世界的な景気の下振れリスクが高まっております。さらに、製造業の先行指標となる半導体需要は、2023年半ばまで在庫調整の継続が見込まれるなど、今後の先行きに対する見通しは一段と不透明さを増しております。

 このような事業環境のもと、当社グループは、「売上収益1兆円」という企業ステージに上がったことで、社会からの当社グループに対する期待の高まりを受け、2030年度に目指す姿「terrAWell 30」の実現に向けた取り組みを加速してまいります。

ユニット制によるグループ経営体制の下、「地球環境」と「ウェルネス(健やかな暮らし)」という2つの成長軸に沿って、当社グループが保有する「多様な事業、人材、技術」と「地域密着の事業基盤」を最大限に活かし、グループシナジーの創出を追求するとともに、既存事業の収益力に磨きをかける「深堀り」と、次の成長を担う事業機会を発掘・育成する「探索」による「両利きの経営」の実践に努めます。

(既存事業の収益力強化に磨きをかける「深堀り」)

 当社グループは、引き続き、各事業領域でグループ会社の統合再編をはじめとした事業構造改革やデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用を推し進めるとともに、総資産の見直しや人員の最適配置に重点を置き、収益力の強化を図ります。また、物価上昇や為替の変動に対応した価格是正を継続するとともに、コストに見合った適正価格を維持することで、収益性の改善に取り組みます。

  (成長事業を発掘・育成する「探索」)

 産業ガス事業の本格的な海外展開に向け、積極的なM&Aの推進と事業の根幹となるエンジニアリング技術を基軸とした事業基盤の構築を進めます。国内では、地域事業会社3社を主とした地域密着の事業基盤を基に、多様な事業領域と技術開発によるイノベーションを組み合わせることで、地域の社会課題解決に資する新事業の創出を進めてまいります。

(海外における事業部門、事業会社の管理強化)

中期経営計画を実現するには、海外事業の拡大が重要となります。特にインドと北米を重点地域とし、当社グループが保有する優れた機器・エンジニアリング技術を活用して、産業ガスおよび関連機器、エンジニアリング事業の拡大を加速してまいります。また、オンサイトガス供給案件の受注による大口顧客の獲得に加え、自社プラントや充填所などの拠点構築にも注力します。さらに、これらの事業拡大を支える土台として、「組織・体制の強化」を図ります。事業分野毎だけではなく、地域毎に、その地域の特性や環境に応じて事業を管理、運営する新たな組織体制やリスクマネジメントの仕組みを整備します。

  (投資の強化と検証)

設備投資、M&Aといった投資については、インドや北米などの海外を中心に、これまで以上に積極的に行い、事業拡大と収益力の向上を実現します。また、環境変化に柔軟に対応し、将来にわたって持続的な成長を実現するために、人的資本や知的財産、ブランド力などの無形資本に対する投資も戦略的に実施してまいります。一方、限られた経営資源を適切に振り向けるために、収益性・成長性を見極め、各事業領域において「選択と集中」を実施するほか、投資案件のモニタリングや検証を実施してまいります。

 (環境価値の創出)

 当社グループは、全社を挙げて、「脱炭素社会」「資源循環型社会」「人と自然の共存社会」の実現に向けた取り組みを進めており、2030年度までに「GHG排出量30%削減」を達成し、2050年にはカーボンニュートラルの実現を目指します。また、「廃棄物リサイクル率80%」や「水使用量原単位10%削減」の目標達成に向け、資源循環や水資源の保全にも注力します。

(積極的な社会課題解決への貢献)

 今後も、当社グループは、事業活動を通じて社会課題解決に注力し、人々の暮らしや産業になくてはならない製品・サービスを生み出してまいります。特に、「アグリ&フーズ」では食料安全保障や食料自給率の向上といった昨今の国際情勢を背景とした社会課題、「ヘルス&セーフティー」では超高齢化社会をはじめとした暮らしに関わる社会課題の解決に貢献します。また、2025年に開催される大阪・関西万博への出展も決定しており、当社グループのパーパスである「地球の恵みを、社会の望みに。」を国内外に発信してまいります。

 なお、各セグメントの対処すべき課題は、次のとおりであります。

(デジタル&インダストリー)

産業ガス分野では、電力費や物流費をはじめとした産業ガスの製造・供給コストの上昇に対応するため、生産・物流面のさらなる効率化に取り組むとともに、自助努力で補いきれないコスト上昇分については、徹底した価格改定を継続し、コストに見合った適正価格を維持することで、収益性の改善を図ります。

また、世界的に需給タイトな状況が続くヘリウムの安定調達・供給に取り組むとともに、国内製鉄所の統廃合によって将来的にアルゴンの供給が逼迫することが見込まれるため、生産設備の増強をはじめとした安定供給体制の強化を図ります。

 エレクトロニクス分野では、国内半導体メーカーの生産能力増強に対応したガス供給設備の設備投資を着実に実施します。また、2023年4月1日付で、当社グループのエレクトロニクス関連事業を産業ガス・特殊ケミカル供給事業と機器装置事業に再編し、新会社の設立や当社からの事業移管、関係会社の統合等を行うことで、機能分化しました。新たな事業運営体制の下、半導体デバイスメーカの需要拡大と多様なニーズに対応していきます。

 成長ドライバーと位置付けているインドの産業ガス事業については、政府による積極的なインフラ投資政策を背景に、鉄鋼をはじめとしたガス需要の拡大が見込まれます。川上領域となる鉄鋼向けオンサイト供給案件の新規獲得とともに、川下領域となるローリー・シリンダー事業にかかわる製造・供給拠点の拡充を両輪で進めていきます。

 また、産業ガス事業の海外展開や大手半導体メーカーの旺盛な生産増強、装置の大型化に対応できるエンジニアリング体制を構築するため、当社の堺製作所において、プラントの製作能力を増強するとともに、複数の拠点に分散していた産業ガスエンジニアリングの開発・設計・製作・運転・ 保守部門等を集約する「総合エンジニアリングセンター(仮称)」の建設を進めていきます。

(エネルギーソリューション)

国内のLPガス需要は世帯数の減少等を背景に漸減傾向にあります。また、配送や検針業務における人手不足の問題も地方部を中心に顕在化しつつあります。一方で、2021年度から電力料金が大幅に上昇したことによって、消費者のLPガスへの関心が高まるといったトレンド変化が一部で起きています。

こうした中、販売店の商権買収や積極的な増客施策による直売比率の向上を図り、収益力を高めるとともに、LPガスや灯油の残量監視に、低消費電力で長距離のデータ通信を可能とするLPWA(Low Power Wide Area)を導入し、配送・充填・検針業務の効率化を進めます。

 また、当社グループの主要事業エリアである北海道地区の事業構造改革として、配送・充填工場の統廃合、卸直販一体化による重複業務の効率化等に取り組みます。

 さらに、低炭素・脱炭素関連では、需要が拡大傾向にあるLNG関連機器の拡販に取り組むとともに、小型CO2回収装置の顧客提案や、家畜ふん尿由来の液化バイオメタン製造など、地産地消型エネルギー供給モデルの構築を通じて、脱炭素ソリューションの社会実装化に注力していきます。また、社会の脱炭素化を背景に国内では製油所を閉鎖する動きが進んでおり、炭酸粗ガスのリソース確保が課題となります。貯蔵設備の増強や新たな原料リソースの確保など、炭酸ガス・ドライアイスの安定供給体制の強化に取り組んでいきます。

(ヘルス&セーフティー)

 我が国の医療を取り巻く環境は、超高齢社会に対応した「地域包括ケアシステム」の構築が進められ、在宅医療の重要性が高まっています。また、医療従事者の絶対数は不足しており、医師の労働環境改善・健康確保を目的とした改正医療法の施行が2024年4月に予定されるなど、「医師の働き方改革」の実現に向けた具体的方策の検討が急務となっています。さらに、セルフメディケーションの考え方も浸透し、健康に関心を持つ消費者も増加しています。

 こうした中、メディカルプロダクツ事業では、コロナ禍で起きた医療機関や生活者のニーズ変化を踏まえ、今後も必要とされる感染症対策や新たな医療提供の形を見据えた事業体制の構築を進めてまいります。特に、従来の医療という枠に収まることなく、人々の健康増進、医療従事者の負担軽減、在宅患者様のQOL(生活の質)向上につながる医療機器や介護用製品の開発・製造・販売を推進するため、2023年7月1日付で当社グループが保有する人材・技術などのリソースを中核子会社に集約します。これにより、製品の開発から製造、販売、保守の一貫体制によるサービスレベルの向上とともに、使いやすさ・省力化・DX推進など、医療現場の様々なニーズをこれまで以上に的確に捉えた製品開発に注力していきます。

 また、衛生材料、注射針、エアゾールなどで構成するコンシューマーヘルス事業では、原材料コストの上昇に対応した価格改定の取り組みを継続するとともに、事業間シナジーによるメーカー機能の強化や生産性の向上に取り組みます。

 病院向けの滅菌受託やSPD(病院物品物流管理)を行うサービス事業においては、DXの推進による調達や業務管理の効率化を図り、人手不足の課題にも対応していきます。また、防災事業では、データーセンターの建設を背景に旺盛な需要が続くガス消火設備工事の受注獲得に注力していきます。

(アグリ&フーズ)

 各種原材料やエネルギー価格が高止まりする中、消費者マインドの低下や節約志向が高まるなど、厳しい事業環境が継続することが見込まれますが、その一方で、コロナ禍からの行動制限緩和による人流回復などにより、ホテルや外食向けをはじめとした業務用食品の需要は増加傾向にあります。

 こうした中、フーズ事業では、コスト上昇に対応した製品の価格改定や量目変更などの継続的な実施により、その影響を低減するとともに、物流の内製化や生産体制の効率化を図り、収益性の確保に努めます。また、成長市場である惣菜分野に対応するために、より加工度の高い商品開発を進め、事業拡大と収益性の向上の両立を目指します。

 国内の青果物市場は、健康志向の高まりや人手不足等を背景に、小売・業務用ともにカット野菜・フルーツの需要が拡大するとともに、生産農家の減少、異常気象の頻発、円安による輸入品の高騰等により、消費者ニーズを捉えた青果物の流通加工と安定調達・供給がより重要になっています。こうした中、アグリ事業では、2023年2月に、業界大手の㈱ベジテックと、デリカフーズHD㈱との資本業務提携を開始し、原料調達機能の強化や物流の効率化などに取り組んでいます。当社の主要事業エリアである北海道における農産事業の基盤強化に注力するとともに、3社協業の下、青果物の調達・加工・販売までのバリューチェーンをより強固なものとし、全国をカバーする物流ネットワークを掛け合わせることで、安全・安心な青果物をお客様のニーズに対応した形とタイミングで供給する青果流通加工プラットフォームの構築を目指していきます。

 また、飲料製造を行うナチユラルフーズ事業では、脱プラスチック化に向けた紙容器高速ラインへの更新をはじめとした生産性の向上やEC事業の強化に取り組んでいきます。

(その他の事業)

 電力事業は、発電燃料となるPKS(パームヤシ殻)や木質ペレット、また、その海上輸送コストの高騰が続いたことに加え、荷揚げ港湾施設の混雑に起因する滞船コストの発生などにより、2022年度の全体業績に大きな影響を与える厳しい状況となりました。2023年は、海上輸送コストがピーク時から低下傾向に推移しており、そのコスト影響は幾分か緩和されてくる見通しです。

 また、発電用燃料調達の多様化や荷揚港湾施設の運用改善などによりコストの低減を図ってまいります。

 また、北米産業ガス事業は、将来における産業ガス供給事業の展開に向け、現地ガスディスリビューのM&Aなどを積極的に推進し、事業基盤の構築を図っていきます。

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの2022年度から2024年度の3ヵ年を実行期間とする中期経営計画「terrAWell 30 1st stage」における経営目標は以下の通りです。当社グループでは、新たに資本効率性向上のために24年度に於いてROIC7%以上を掲げて取組んでおります。

 当連結会計年度は、過去にない規模で資源・エネルギーをはじめとした各種コストが高騰する非常に厳しい環境下で、FIT により発電燃料の高騰分を価格転嫁できない電力事業を除き、全社で徹底的な販売価格の是正を実施し、売上収益は中期経営計画を達成しましたが、営業利益は未達となりました。経営数値目標の達成に向けて、引き続き成長分野と位置付ける海外及びエレクトロニクスを中心に事業拡大に向けた取組を進展させるとともに、資本効率の向上に向けて取り組んでまいります。

 

中期経営計画「terrAWell 30 1st stage

2022年度

2022年度

2022年度

2023年度

2024年度

中計

計画※3

実績

計画

中計

売上収益(億円)

10,000

10,000

10,049

10,800

12,000

営業利益(億円)

700

620

621

720

1,000

営業利益率(%)

7.0

6.2

6.2

6.7

8.3

親会社の所有者に
帰属する当期利益(億円)

440

400

401

440

630

海外売上収益比率(%)

9.3

11.0

ROE(%) ※1

10.7

9.7

9.7

9.9

10.0

ROⅠC(%) ※2

5.6

7.0

親会社所有者
帰属持分比率(%)

38.2

39.0

39.4

38.0

36~40

ネットD/Eレシオ

0.84

0.81

0.75

0.86

0.8~1.0

※1 親会社所有者帰属持分当期利益率
        (親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分(期首期末平均))

※2 投下資本利益率=(営業利益×(1-税率))÷(資本合計+有利子負債)(期首期末平均)

※3 2022年11月9日公表の通期業績予想

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