文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
1.経営方針
(1) 会社の経営の基本方針
ミッション:半導体の自動検査技術で人々の豊かな生活と幸せ、社会の発展に貢献します。
ビジョン:(我々のあるべき姿)
DXと人との主要インターフェースである「ディスプレイと周辺デバイス」、そして電子の目「イメージセンサー」を始めとする半導体の自動検査における、トップリーダーを目指し、世界的企業へと成長する。
バリュー(会社価値の創造において優先すること)
①我々は、顧客満足を第一にする
②我々は、自分の事業領域に、常に創造・挑戦し、No.1を目指す
③我々は、高い製品品質と持続的な改善を通じ顧客に貢献する
④我々は、PDCAを早く回し、スピード感を持って、目標を達成する
⑤我々は、仕事を通じ、豊かで生きがいのある人生を構築する
(2) 目標とする経営指標
デジタルと人間のコミュニケーションは「ディスプレイ:出力」と「イメージセンサー:入力」が主流になる。我々は、人とデジタルを繋ぐ最も重要な半導体を検査する仕事を、主軸にして事業を拡大します。売上高経常利益率20%以上の確保と配当性向30%の回復」を目標としております。このため当社は、次世代ディスプレイドライバIC向け検査装置、高精細化著しいイメージセンサー、ディスプレイ(アレイ)分野向け検査装置並びに先端ロジックデバイス向けの検査装置の開発販売を継続し、メインマーケットを市場の消えた日本国内から中国、台湾に移し、事業の拡大を図ってまいります。引続きIoTヘルスケア市場への参入、インダストリー4.0を念頭においた、自重補償型マニピュレータの自社装置への実装を進め、また水素ナノイオン洗浄液市場を通した環境配慮型事業を推し進めてまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社の検査装置の対象のひとつであるイメージセンサーの分野は、情報端末の市場拡大もさることながら、スマートフォンの画質を一眼レフに近づける技術開発がすすんでおり、カメラの複眼化が進み、ハイエンド製品では3眼が標準になっていますが、搭載個数がスマートフォンの商品力に直結するため、さらなる多眼化が進み、イメージセンサーの需要は大きく増加、また今後大きな市場が見込まれている高速通信規格である5G(第5世代移動通信システム)技術の普及拡大に合わせた車の自動運転など、本分野も同様に急拡大し2025年には2兆6,460億円(2019年比38.5%増)が予測されています。(株式会社富士キメラ総研:イメージング&センシング関連市場総調査より)
特に当社が力を入れる、ディスプレイドライバIC検査装置では、2020年10月に開発を完了し、2021年1月末より出荷を開始した新装置WTS-577SR、そしてその後継機にあたるWTS-577SXの、各有力顧客でのベンチマーク(お客様工場に装置を貸出し、実際の現場で量産半導体の検査ラインに投入し、検査スピードや精度、そしてデータの相関度などを評価いただくこと)は終了し、大阪事業所並びに当社100%製造子会社(ウインテスト武漢)での増産体制構築を完了、順次出荷を行っています。そして現在更に、高速、高精度な次世代機WTS-9000C(コンパクト)、WTS-9000 S(スタンダード)の開発を行っておおり、2023年末にリリースを行う方針です。同装置はLCDドライバー検査装置、イメージセンサー検査装置、先端ロジックデバイス検査装置、そしてフラッシュメモリーの検査にも、内部の一部のリソース基板を差し替えるだけで対応可能な装置として開発を進めております。
2021年中は、WTS-577SRを使った積極的なベンチマークを伴う中国市場攻略の成果として、デザインハウス及びOSAT合わせて15社を超える顧客から量産可能との認定を頂きましたが、新型コロナウイルス禍の影響から納入タイミングの調整を頂いておりました。2022年はそれらベンチマーク装置の売上、並びに新規受注を目論んでおりましたが、当社が大きく期待を寄せた2022年下半期は、長引いた中国各地のロックダウンと先進各国のテレワーク終了に伴う、情報機器向け半導体部材がダブついたことを原因として、大きく半導体市場が低迷することとなり、貸出分及び準備をしていた出荷分につき2021年同様受注は低迷致しました。当社グループとしては、2022年中に会社体力並びに顧客への当社技術の啓蒙を目的に検査能力の向上を目指し2022年3月から9月にかけて複数の次世代検査装置オプションを開発完成させリリースを行いました。(次世代オプションを搭載したWTS-577SRのリリース、高速ドライバSSDR 2Gbps及び同4.0Gbps、ハンドラーテスト用超多ピンHIFIX装置、イメージセンサー検査装置用新光源装置「W LS150」、高速信号キャプチャ―ボードMIPI DPHY 2.5Gbps、等)これらの開発と並行してマルチプラットフォーム型次世代検査システムの開発を進行させています。
2023年の営業の強化策としては、台湾の既存販売契約店及び当社中国子会社に加え、台湾Viccom社並びに日本の有力企業RSテクノロジーズ社と販売店契約を締結、更なる追加受注に向け営業活動をしてまいります。
2.経営環境
当連結会計年度上半期における世界経済は、北京オリンピック終了後の中国を含むIT経済の回復に期待が寄せられましたが、全世界的に当初の想定を超えて猛威を奮う新型コロナウイルス禍の影響から北京オリンピック以前にも増して、感染防止のための規制が強くなり、各都市でのロックダウンが深刻な影響を半導体業界にもたらしました。また、同下半期は、感染爆発が一段落した2022年8月以降当局の規制緩和も大きく進み、隔離などの渡航制限が大きく緩和されたことで、営業活動またエンジニアの顧客現場でのベンチマーク活動が行えるようになりましたが、同時にその後に中国各地でのそれまでのロックダウン等の影響から、大きくスマホ等の需要落込みが顕在化、加えて先進各国で続けられていたテレワークが順次縮小し、PC需要及びネットワーク機器等需要が大きく落ち込むことになり、いわゆる巣籠り需要が急激に縮小した影響から半導体市場ではスマホなどの情報機器端末(LCDパネルや周辺半導体)とPC向け半導体部材がダブつき、大きく半導体市場が低迷することとなりました。(日本経済新聞、2022年12月16日付)加えて、物流の停滞や半導体材料の不足などを原因とし半導体工場稼働率は大きく低下する事態となりました。
当社への影響としましては、上述の世界経済の状況を受け、新型コロナウイルス禍の影響が一段落し、停滞したビジネスが活発になると予想した当連結会計年度下半期に、市況の低下を原因とした設備投資のタイミング調整が入り、受注済み製品の納入タイミングの調整要求と、下半期に強い引合いが期待された顧客からの発注に影響が出ており、受注、売上は低調に推移しました。また、半導体部材のダブつきが報じらておりますが、依然として先端ロジック半導体など所謂産業用半導体チップは依然として品不足、入手困難な状態であり、当連結会計年度に調達した資金の一部で、部材の早期調達を行ないました。
当社グループが属する半導体市場並びに表示デバイス市場の2022年度及び2023年の状況としては、2022年折り返しから、新型コロナウイルス禍による中国各地のロックダウンや、規制緩和後の爆発的な感染拡大、そしてロシア・ウクライナ情勢がエネルギー市場に深刻な影を落とすなどの影響が世界経済を混乱に陥れ、各方面に深刻な懸念が広がる状況となっております。足元では、各国が進めるウイズコロナ政策における、テレワーク需要も一段落したことなどを受け、半導体製造各社による在庫調整が2023年上半期まで続くとの見方がでています。テックプラス社の調査によれば、2022年第3四半期連結会計期間における製造工場の稼働率は平均65%ほど、第4四半期連結会計期間では61%ほどと述べています。
2023年下半期以降の半導体市場は、各国政府の進めるDXつまり、デジタルトランスファーのさらなる進展や脱炭素化推進に向けた取り組み、自動運転や5G、6Gなどの高速通信環境がもたらす新しい世界(VRやメタバース)が急速に開発・開拓され、広範な需要に支えられ、長期的な当該市場は、足元も含め半導体サイクルと言われる短期需要変動を繰り返しつつも中長期的に大きな成長が予測されています。しかしながら、SEAJによると半導体製造装置市場の2023年度は、半導体・FPD共に投資の落込みが予想されるため、全体で6.6%減の3兆8,614億円と予測されています。
表示デバイス市場は、2022年は上述のような環境の下、売上高、出荷数量、出荷面積もすべてマイナス成長の年となりました。経済的にはインフレを伴う経済状況下でパネル価格は下げ圧力が強く、また、最終製品の更新サイクルの大幅減速により、供給過剰の年となりましたが、2023年は下半期からゆっくりと回復することが期待されています(「ディスプレイ産業フォーラム」資料より)。またテックプラス社によると、同市場は、2023年はゆっくりと回復に転じ、2022年比2%増の1,248億ドル、2024年には、さらなる回復となり同7%増の1,331億ドルと予測しています。
当社の2022年事業戦略として、ディスプレイドライバIC検査装置では、2022年3月から9月かけて複数の次世代検査装置オプションを開発完成させリリースを行いました。(次世代オプションを搭載したWTS-577SRのリリース、高速ドライバSSDR 2Gbps及び同4.0Gbps、ハンドラーテスト用超多ピンHIFIX装置、イメージセンサー検査装置用新光源装置「W LS150」、高速信号キャプチャ―ボードMIPI DPHY 2.5Gbps、等)これらの開発と並行してマルチプラットフォーム型次世代検査システムの開発を進行させています。上記オプションは、既にいくつかの顧客製造現場において、ベンチマークを終了しており、2023年の当社ビジネスの推進に不可欠な機能やリソースであり、新型コロナ禍後の半導体市場に対し強力な事業推進ツールとなります。
当社としては、2020年からの2年間は、2020年1月から顕在化した新型コロナウイルス禍の影響を大きく受けましたが、その間、「ファブレスからの脱却」、「半導体市場において大きな成長を遂げる中国マーケットに進出できる体制の構築」、セグメントを整理し「半導体検査装置事業に集中」、組織を再編し「開発の結果が出せる組織」への改革など、経営体制の見直しを含む新体制移行に邁進してまいりました。今後もウインテストグループとして、横浜本社、大阪事業所における開発環境整備、人材育成及び増員に努め、組織の強化を行い、総務経理部を含む各部署における業務推進体制を革新するため、ERPやITを駆使した、より機動的かつ最新の環境で、設計、開発及び経営能力を強化するとともに、トータルコストの削減、納期の短縮と品質の向上を目指し、顧客満足度を上げることで受注増、業績の向上、企業価値の増大を図り、株主の利益につなげてまいります。
3.対処すべき課題
(1)主たる既存事業への取り組み
当社グループの主要事業である半導体検査装置事業では、高度化、多様化するお客様の検査ニーズにお応えするため、既存検査技術の革新を進め、上述のように、ビジネス逆風下の中、次世代オプションを搭載したWTS-577SRのリリースを始めとして、高速ドライバSSDR 2Gbps及び同4.0Gbpsそして、ハンドラーテスト用超多ピンHIFIX装置やイメージセンサー検査装置用新光源装置「W LS150」、そして高速信号キャプチャ―ボードMIPI DPHY 2.5Gbps、等の開発を完了しました。また次世代半導体チップ向けマルチプラットフォーム検査装置の開発を、2023年半ばに開発完了ターゲットを絞り鋭意進めております。
さらに足元の計画として、製造能力の強化、品質管理体制の整備推進を通し、お客様にとってより信頼される企業として成長するために、以下の課題への取り組みを進めてまいります。
当社の主たる事業分野である半導体検査装置事業分野はスマートフォンに代表されるように新製品サイクルが非常に早く、おおよそ、6か月を目途として新製品がリリースされ、その技術レベルや機能のレベルが上がるごとに新機能を実現するための半導体が要求され開発されています。そのため、当社グループとして検査装置の開発の手を緩めることなく、市場要求に合わせた新機能などの開発を今後も進めてまいります。
半導体検査装置においては高精度、低コスト、高速化に加え信頼性の向上が求められるだけでなく、更に使いやすいユーザーインタ―フェースと、検査用プログラミング補助機能の強化などを実現する必要があります。それぞれをこれまでにないスピードで推し進めることが、同分野において求められることから、引続き組織と業務運営体制の整備を進め、よりスピーディーな開発判断ができるように改革を行ってまいります。なお、随時開発体制の見直しと強化を行ってまいります。
世界の半導体市場はもはや中国を抜きに語れないところまできております。当社は引続き、中国と台湾をメインマーケットとし、現地顧客のニーズを把握し当社100%出資の中国湖北省武漢市に設立した製造子会社の能力を最大限に高め、製造から納品までのタイムラグをなくすことで、現地顧客の信頼、ニーズを先取りした経営を行ってまいります。
中国子会社に設立した開発部の能力を生かし、新機能や高速化を目的とした開発や改良を行わせ、製造品質の強化、営業部の拡充を進めてまいります。中国子会社営業部及び日本、台湾における販売店との連携を強化、全販売拠点協働で新規顧客へのアプローチ、既存顧客からのリピート受注の促進を図ってまいります。
当社は、中国・台湾のマーケットにより深く参入するため、中国子会社の営業部及び開発部と日本のテスト技術課が三位一体になった新規顧客向け検査装置貸出評価活動(以下「ベンチマーク」という。)や販売戦略プロジェクトを推進し、なお一層販売体制を強化し、拡大が続く中国マーケットに深耕してまいります。加えて、2022年に一時中断した、エンジニアや管理部門の人員の雇用を促進し量産に向けた製造体制の強化を2023年に引続き推し進めてまいります。
当社は、業務範囲の拡充を目的に、産学連携を行っております。2022年後半までは新型コロナ禍によるリモート授業の多かった大学も、順次再開し、2023年からは平常授業に移行しております。以下に産学連携の進捗につきご説明申し上げます。
検査装置向け工場FA化機器技術(「自重補償機構技術」)、当該技術については、学校法人慶應義塾大学慶應義塾先端科学技術研究センターと共同開発を進めており、特許等の申請については、既にお知らせのとおり手続きは終了しております。当該技術は当社の検査装置とウエーハ搬送装置との間のドッキングアダプター(以下「ポゴタワー」という。)の着脱(約25㎏~30㎏)をオペレータ一人で簡単に安全に行うための補助アーム(以下「マニピュレータ」という。)で製品化を目指しており、現在複数の製造工場と協議を行っており量産製造の準備を行っています。その後、応用製品として「半導体製造工場内FA化システム」、「物流搬送システム」や「介護等」への応用が可能と考えております。
奈良県立大学と進めております脈波(BCG,ECG)を利用したヘルスケア管理システムは、同大学並びに株式会社TAOS研究所とアライアンスを継続、ご協力頂ける病院に試験設置検証を行った後、最終課題であったバイタルデータによる個人認証技術も確立し2023年3月9日に開示しましたように、4月1日より販売を開始いたします。販売に関する詳細につきましては、当社WEBページをご参照ください。
(注)インダストリー4.0 検査装置向け工場FA化機器技術に使われる「自重補償機構技術」とは
一般的な「重量物搬送装置」は、電気モーターやエンジン等の動力源を持ち、かつ、重いカウンターウエイトや油圧・圧縮空気の出力を借りることで、数十キロから数百キロの重量物の移動をアシストしますが、装置が大掛りで重量が重くなることや、重量物に見合う外部動力が必要となるといった課題を有しています。これらの課題克服のため、当社と慶應義塾先端科学技術研究センターは、いかなる動力や重いカウンターウエイト、そして油圧・空圧機器をも使用しない「自重補償機構」の開発を進め、バネの弾性力を応用した軽量かつシンプルな構造を内蔵したロボットアームの継続開発を行っております。今般開発した試作機は、被搬送物の重量が変化した場合でもその重さに見合った自重補償ができる構造となっており、回転軸を除く各軸にて搬送する重量物の自重補償を達成し、自身の腕部分の自重をも含め、より安全な自重補償を成立させています。
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